5.ボーイズラブドラマCDでキャラクターを演じる声優がファンから受ける被害


最初のページで”キャラクターを演じる役者は、決してキャラクターと同一ではない”と書きました。再確認もしました。しかし私達ファンの中の一部に、やはりそれを勘違いしてしまう人が稀にいるのが現実です。


これは既にご存知の方も多いかもしれませんが、具体例を出しましょう。


とある人気男性声優が個人のホームページを開いていました。
そこには勿論ファンが集います。本人の日記もあって掲示板もあって、ホームページは賑わっていました。

ある日、掲示板にとある一人のファンからこんな書き込みがあったそうです。


「○○さん(役者本人名)は、受けですか?」


その男性声優はその書き込みに激怒し、掲示板は閉鎖になりました。



なんて恐ろしい事件でしょう。
私はそれを知った時、言葉を無くしました。


これは「役の上の話ではなく、個人的にあなたはどうなんですか」という質問ですよね。

これはキャラの同一視だけではなく、ネットマナーや世間的モラルの欠如でもありますよね。
インターネット上だからこそ、ファンだから、こどもだから、という言い訳は通用しません
”悪気のない無責任”な行為こそが、インターネット上では簡単に重罪になり得ると思います。

現にその男性声優は激怒したんですから。

年齢関係なく、たった一人のファンの誤った行動からその男性声優は”ファン全体への不信感”を抱いたんじゃないかと思います。ファンを信用できないという状態は、もしかして当たり前の事なのかもしれませんが、とてもさびしい事なのではないでしょうか。

今後このような事が無いよう、ただ祈るばかりです。




そしてもう一つ、ごく最近の具体例を取り上げます。


とある仲の良い男性声優・AさんBさんがいます。
Aさんにはとても仲の良い友人である一人の女性声優がいて、お二人は仕事でもオフでも一緒に過ごす事があったそうです。

恐るべき事は、その事実を知った”AさんとBさん二人とものファンの一人”が行ってしまった行為です。

そのファンは女性声優宛に

「AさんはBさんのだから、取らないで!」

と手紙を送ったそうです。


これは一体どうした事でしょうか。
彼女に何が起こったんでしょう。


更に恐るべきは、
どうもその女性声優一人だけではなく、他数名の女性声優にも同じ内容の手紙を送ったという事実です。



これは一体、どうした事でしょう。
被害が更に広がっています。
「私のだから!」というファン思考も違いますが、「Bさんのだから!」というのは、何事でしょう。




これは一体誰が悲しむ結果になるんでしょう。

Aさんと仲良しであるその女性声優は大変困り、本気で心を痛め、先輩の男性声優に相談したそうです。

当たり前ですが、傷ついたのはその女性声優さん達だけではなく、
”自分達のファンのせいで身近な人を傷つけた”と考えるAさんであり、Bさんですよね。

そして、同じファンがした事だと思うと、私達も胸が痛いんです。



そのファンの言いたい事も分かるんです。遠く手の届かない好きな人の近くに仲の良い女性がいるのは、とてももどかしい事だと思います。
しかし本人の事を本当に思いやれれば、それもぐっと堪えられるものだと信じています。むしろ仲の良い、楽しそうな状況を喜んであげられる、そんなファンこそ本人にも喜ばれるんじゃないんでしょうか。早とちりなさる人がいるようなんですが、仲が良いからといって必ずしも恋人同士とは限りません。それは当たり前です。
人を楽しませられる、もしくはそうしようと努力している本人達を見習えるようなファンでありたいですよね。もし誰かとお付き合いしていても、それは喜ばしく受け止めてあげたいものです。

…うう、これは何年か前の自分だったら聞く耳を持たない言葉でした。分かるんです、知ってるんです。誰でも一度は願う事です。好きだから付き合いたい、くらいの夢。あれ、イタタ…。

でも今なら心から言えます。

人が笑顔でいられるのは、周りの人達のおかげです。人間誰でも、一人じゃ面白いことなどありません。なので、好きな人に笑っていて欲しいと思うのなら、その横や周りで笑っている人まで好きになってあげられたら、と思うんです。

ここで「己の欲せざる所は人に施すなかれ」という名言を引用します。
つまり「自分がされたら嫌な事は、他人にするな」という事です。もう一度、ゆっくり考えてみましょう。



話を戻します。


そんな事件を知らない私は
時を同じくしてAさんとBさんのイラストサイトをしていて、AさんとBさんの同人誌を作っていました。



もしかして、私がウェブ上で発信した情報を”勘違い”した人がいる可能性は、無いだろうか。


そうだとしたら、事態は最悪です。


本当に、どうして良いのか分かりませんでした。

私は勿論”妄想”として扱っていましたが、必ずしも受け取る側が同じように受け取るとは限らないのでした。
現実と妄想のはっきりとした区別を伝えるのが大事なんでした。その”大前提”が、私の中にも欠如していました。私が描いているのは、二次元キャラクターではなく、生きている人間です。なのにいつからかボーイズラブが当たり前になってきて、麻痺している自分がいました。

元々AさんとBさんは仲が良く、一緒にお仕事をする事も多い、業界的に”コンビ”のような存在ではあると思います。お二人が仲の良さは万人が認めるもので、”何を今更”かもしれません。

しかし、この事件に私はまったく関係が無く、責任が無いと言い切れるでしょうか。

言い切れません。


私は決して”今後ナマモノ同人で本を作るな”と言っているのではありません。

私に足りなかったのは”隠す”という作業でした。
いくら検索避けのタグを全ページに入れているからといって、私のサイトに立ち寄れば誰にでもノーマルの絵は見られるようになっていましたし、目立つ場所にナマモノ同人誌の告知を置いていたから、悪目立ちしたのかもしれません。

ナマモノ同人とは二次元二次創作とは違って、宣伝してはならないものでした。

これは大前提ですが、ナマモノ同人とは本人・関係者・事務所禁止です。
簡単に辿り着けるような場所に妄想の産物があると、上記のように、最終的に本人達に被害が出る可能性が高いからです。


これは私が最初から自分でやっておくべき配慮に欠けていた、という事です。私はノックダウンです。







6.企業側の配慮の欠如

さて、ここで発売元の業界に疑問が浮かびました。

一体何故、ボーイズラブドラマCDは全年齢対象なんでしょうか。

ボーイズラブドラマCDをどう聴くかは個人の自由なので、分別が付けられる年齢になるほどそれは”趣味”であったり”ファンタジー”として成立すると思います。


しかし、実年齢が若い者にとって、これはとても残酷な事です。


大人にとって「趣味」として成立していても、若年層にとっては「ボーイズラブ作品を見たり聴いたりする事自体が、禁制を犯しているようなワクワク感」に近いと思います。

具体的に絵で描かれていないからこそ生まれる問題も、あるんじゃないでしょうか。
ボーイズラブゲームは性描写があると”18禁”になるのに、ボーイズラブドラマCDは”大丈夫”なんでしょうか。

これはもしかして、大人の目線に合わせてはいけない場所なんじゃないでしょうか。

ボーイズラブだからといって、目に見える性描写がないからといって、それは一体”何を演じているドラマ”なのか、企業側の意識が薄いのではないかと思います。

若年層は経験が追いつかない分、想像力が豊かなものです。
そして欲望のままに走れるのもまた、若年層です。

私と同じ歳の友人に、中学時代に同人誌にハマっていた人がいます。彼女は13歳の頃に18禁のBL同人誌を読んでいたと言っています。男女問わず、その時期が性的なことに興味を持ち始める年齢です。彼女はその頃から分別があったから良かったものの、これが現実です。
約10年前と今とではBL作品の多さと浸透具合の差は目に見えて違います。それはインターネットの普及と情報の伝わる速さに比例して高まっています。

実際の知識や経験が少ない時期、突然ボーイズラブドラマCDを聴いてしまった少女が一体どうなってしまうのか、少し考えて頂くべき問題では無いでしょうか。

そしてこの問題に引っかかる消費者の、そのまた何割かが実際声優に悪気無く精神的被害を負わせている可能性が高いんじゃないでしょうか。


年齢制限表示をしろとは言いませんが、もう少し全体への配慮があっても良いんじゃないかと思っています。





7.結論


私は、誰か一人が悪いと言っているわけじゃありません。全体の麻痺が、少しずつズレを生んでいるのではないか、と思っているんです。


そして、
ボーイズラブへの感覚に麻痺し、他者への配慮を怠ると、必ず誰かに悪影響を及ぼすという事です。


最初から最後まで「ボーイズラブにおける世間的麻痺」の話をしましたが、決してボーイズラブ作品が悪いのでもありません。

なにやら消費者側にも提供者側にも節度が薄れてきているような気がしているんです。

今からでも、一人一人が変わっていけたら、と願っています。


これもまた身をもって気づいた事ですが…慣れとは恐ろしいもので、当たり前じゃないのに何故か当たり前になってしまった部分が多くあります。自分がBLや同人誌好きである事に開き直りすぎたかも、と自分で自分に反省しております。




次のページからナマモノサイトについてです。
ナマモノサイトの話は聞きたくない、という方は、ここまでありがとうございました。


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